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日本のジャズ・ミュージシャンで千曲以上暗譜している人って誰がいる?

先日,「日本のジャズ・ミュージシャンで千曲以上暗譜している人って誰がいる?」という話になり,東京だとスガダイロー(プロ),関西だとニューオリンズ・ラスカルズ(アマチュア)だという話になった.

アルト・サックスの東出(AZUMA “DEL” Iduru)さんが中学を卒業してハーレムに渡った時.チャーリー・パーカーのNow The Timeを練習してジャム・セッションに行ったら,ホストにF#で演奏をされ,「顔を洗って出直せ!」と洗礼を受けた.日本だとNow The Timeと言えばFでしか演(や)らない.

以後,Delさんは毎日ジャム・セッションに通い.演奏されている曲を覚え,どの曲もAny Key(12種類の長調,12種類の短調)で吹けるようになるまで3年間ひたすら練習をした.

ジャム・セッションはプロも来るが,なんと言ってもプロを目指しているアマチュアが学べる場である.

日本では最低千曲はAny Keyで出来ないとジャム・セッションの舞台に立たせてもらえないというような厳しさはない(そもそもそのレベルだとホストが出来るミュージシャンが日本にはいない)ので,日本のミュージシャンは普通に譜面をみて演奏をするし,特殊なKeyでの演奏はしない.

千曲をAny Keyで演れるように練習するということは,単純に万を超える練習が必要になる.要するに量が質に転化するまでの練習が必要となる.だから間違いなくそれは演奏家としての質を高めることになる.

ただ,型やクリシェに陥ることなく,音楽的に演奏することが出来る千曲を超えるレパートリーを持つことは並大抵のことではない.でも,それがジャズ・ミュージシャンのワールド・スタンダードであり,プロのジャズ・ミュージシャンとしてのコモン・センスであることも間違いない.

ニューヨークのアポロ・シアターで行われるアマチュア・ナイトの出演者が,日本のプロよりも凄いパフォーマンスをするのは,音楽に限らず,舞台人として求められているコモン・センスの違いが多分にあると思う.