金井清光著「風姿花伝詳解」

先日,神戸古書即売会で見つけた金井清光著「風姿花伝詳解」.風姿花伝に関する本は見つけたら出来るだけ買って読んできましたが,恥ずかしながら金井清光さんを知りませんでした.昭和58年に明治書院から1万5千円で出版された本です.大卒の初任給が12〜3万円の時代ですから,今だと2万5千円位する高価な本であったようです.そのため古書店で出会う機会がなかったのかもしれません.風姿花伝を詳解している本の中では,ずば抜けて分かりやすく,学的にも大変素晴らしい本だと思います.

巻頭言の締めを引用します.

私個人としても戦前の岩波文庫『花伝書』をはじめて読んでから、今日まで四十五年も読みつづけている風姿花伝を、できるだけくわしく注釈してみたいという気持ちを長い間抱いていたが、曲りなりにも本書をまとめたことで、いまは一区切りついたという感じがしている。しかし学問は寸時の停滞もなく前進してゆかねばならない。本書をさらに抜本的に書き直す機会は私の生涯にはもうないであろうから、若い世代の研究者に本書が活用されて、より立派な注釈書が出現することを待望する。そうした営みを積み重ねることによって日本文化の研究は進展し、人類の生活はいっそう豊かになってゆくであろう。
昭和五十八年九月 著者

この時,金井清光さんは61歳で,鳥取大学の教授をされていたようです.

能はワキの視座で楽しむものだと私は思っています.そして,その視座には中世の仏教観が切り離せません.金井清光さんは,世阿弥たちが信仰した時宗について注目し研究をした方でもあったそうです.夢幻能を考える時,金井清光さんの業績は無視出来ないものなのではないか,そういう気がしています.

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