15 February 2015
@1500ZK1N went QRT at 1130Z Sunday, February 15th.
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73, Glenn W0GJ
For the KP1-5 Project
Navassa National Wildlife Refuge(ナヴァッサ野生生物国家保護区)からの K1N の QRV が終わりました.
KP1 のことを Navassa Island(ナヴァッサ島)ではなく Navassa National Wildlife Refuge と書いたのは,今後,K1N のプロジェクトの検証が行われていく中で,重要なキーワードになると思われるからです.Navassa Island は 1999 年 12 月 3 日に保護区に指定されたため,ペディションの実施が非常に困難になりました.そして,今回の K1N が初めての保護区からの QRV でした.
KP1 からの QRV は実に 22 年ぶりでした.保護区の監督省(米国内務省米国魚類野生生物局)から,「少なくとも向う 10 年間はアマチュア無線のための上陸許可は出さない.」と言われていることが昨年末にニュースで流れ,今生で交信出来るのは今回が最後かも知れないと焦られた方も多いと思います.
ペディション期間中,私をよく知る友人達には,「いつもの毒舌をはかない.二枚舌だ.」と言われたりもしましたが,最後まで諦めずにトライしている人達がいる中,ともすれば憎悪の拡大再生産に荷担するかもしれない発言は控えるべきだと考え,言いたいことは言わずにいました.QRV が終わりましたので言いたいことを言わせていただこうと思います.
非難されるべき人
他国のアマチュアのマナーが云々という話しもあるでしょうが,今回は,世界中で一番マナーが悪かったのは間違いなく JA でしょう.
特に非難されるべき恥知らずな方は次のような方です.
- 過去,KP1 と交信し CFM しているバンド・モードでは交信をしないで欲しいというチームからの要望を無視して交信した局.例えば,W5IJU/KP1 と 15M SSB で交信し QSL を CFM しているにもかかわらず,K1N でも 15M SSB で交信している局.
- ATNO 局向けの最後の運用が行われている時に,ANTO ではないのに呼び倒していた局.K1N のオペがブチギレていました.当然でしょう.
- NA にあるリモート・ステーションを使用し,JA のコールサインで交信した局.アメリカ及び日本の電波法上で違法.DXCC のルール上も違反.
- NA にある WebSDR で受信をし,JA から送り込みをして交信した局. DXCC のルール上,違反.また,送り込みに使った出力がオーバー・パワーであれば,日本の電波法上も違法.
1 に関してはペナルティを科すことは困難でしょうが,2 に関してはゼロ・トレランス(Zero-Tolerance Policy)で対応すればよいと私は思います.
3 と 4 に関しては論外です.趣味というものには見識が必要なのです.遊びのセンスがないとしか言い様がありません.若い世代のやる気を削ぐだけですから,CFM した QSL を持って早く逝っていただきたいと思います.
DQRM(Deliberate QRM.故意による QRM)
信号が弱く交信がし難いペディションになるほど DQRM が酷くなる傾向があります.K1N は予想していた以上に DQRM が酷かったと言われる局が多かったペディションでもありました.
オンフレで架空のコールサインで CQ を出す.他人のコールサインを使ってオンフレで呼び倒す.オンフレでキーダウン.音楽まで流れました.多くは妬みによる所行だと思います.
しかし,妨害を受けたのは K1N と交信したい DXer だけではありませんでした.
QRV 初日の 40m CW では,国内が開き,標準的な設備の局が K1N の信号を受信することが出来ないコンディションの中,DX の邪魔だと国内 QSO を楽しみたいと思っている局を片っ端から QRT させて行った DXer もいました.私はこれも妨害だと思います.(K1N 初日,残念なこと.)
国境を越え世界と交信することを喜びとしている DXer が,文化の多元性を認められないというのは大変恥ずかしいことだと思います.
余談ですが,今回,SSB で出現したポリスで,オンフレを注意するのではなく,コールバックを返す海外のポリスをよく耳にしました.オンフレで呼んでいる局のコールサインを言って「59」とレポートを送ると「59 Thank you!」と答えて直ぐにクリアになるのです.かしこやなと爆笑しました.
普段からもっと無線をしましょう.
私の知っている局で,普段から無線をし,カリブの局と普通に交信をしている局は,100W でも交信が出来ています.もちろん,そういう局はアンテナが凄いです.ですが,何よりも経験的にカリブとの伝搬を知っているので無駄のない交信をしています.
文句ばっかり言っている局は,普段,無線をしていますか? 普段から無線をしていれば,カリブと交信するということが,自分にとってどれくらいの難易度があることなのかわかるはずです.そして,交信が出来ても出来なくてもそこに楽しみが見いだせるはずです.楽しさが見いだせない人は遊びのセンスがないのです.趣味人としての見識がないということです.そういう方は無線で遊ぶのには向いていないと思います.
情報源について考えるべき
英語に堪能な方は海外のニュースやペディション・チームが発表する計画を読んで理解することが可能でしょう.ですが,DX には興味があるけれど,英語が苦手という方は,DX を楽しんで行くために,どのように日本語で情報を得て行くのか真剣に考える必要があると思います.
今回,ATNO 局向けの運用が行われましたが,オペレーターが説明しても理解出来ない局が沢山いました.指定を無視して燃える闘魂で呼び倒しです.それは ATNO ではなく ANTOnio 猪木です.ATNO という言葉が使われ始めたのはここ 3 年くらいのようですが,K1N で有名になり,海外でも ATNO って何だ?と話題になりました.そういう情報はどうやって知り学ぶことが出来ますか?
K1N は DQRM 対策に新しい試みにトライしました.それが事前に運用周波数を公表しないということになりました.彼等はもっとうまく DQRM 対策が成功すると思っていたと思います.しかし,失敗したと言っていいでしょう.なぜ失敗したのか,それは DQRM 対策をするので「よく聴いて欲しい.」というメッセージが理解されなかったからです.これはペディションの公式サイトに英語で書かれています.そういう情報はどうやって知り学ぶことが出来ますか?
DXCC で KP1 が欲しいとの要求が NA(北米)よりも高い EU(ヨーロッパ)と AS(アジア)からの資金援助が,NA より少ないのは何事だというアナウンスがチームから出されていました.そういう情報はどうやって知ることが出来ますか?
もちろん The KP1-5 Project にも問題がある
事前に言っていた,「指定無視の局は絶対にログインしない.」という約束を早々に破りました.JA や EU を指定しながら NA を取るということが普通にありました.これでは秩序が保てなくなります.
事前に運用しないと言っていたモードでの運用が早々に行われたり,十分な需要を満たしていない状況でより交信がし難いモードが運用されたり,まったく何がしたいのか理解出来ない運用を行いました.また,運用方針の変更についての説明は一切しなかったため,何を信じたらいいのかわからない状況を招きました.
設備の発表が直前まで行われませんでした.需要に対して設備が貧弱になる理由(おそらく運用許可を得るために環境に配慮した最小設備が求められたためだと思われる)は事前に説明するべきですし,交信したいと思っている局が準備をするためにも,設備計画はもっと早く公開するべきでしょう.
パイロット局の軽視も問題になりました.運用が開始されてから N2OO Bob を筆頭とするパイロット局の意見を現地の運用チームが受入れなかったという話しが流布しています.JA ではパイロット局を勤めていた JA1ELY 草野さんを筆頭に,アシスタントをされていた JH1NBN 内山さん,ビジネス等でグローバルな交渉事に長けた方が多い DX グループの方々が総力をあげて交渉を続けられていたことからも,パイロット局の軽視が推し量ることが出来ると思います.
Club Log を使ったまやかし
Club Log の Expedition Charts(DX ペディション用オンライン・ログ)に Continent By Uniques(大陸毎の正味の交信局数)の Statistics(統計)がないのは問題だとあらためて思いました.
現状,大陸毎の交信実績を見る統計は Breakdown by Continent = Continent By Total QSOs(大陸毎の交信数)しかありませんので,大陸毎にどれだけ沢山の局と交信が出来たのかがわからないのです.ですから ATNO の需要がどれだけ満たされているのか Online Log を見ても把握出来ません.
よく Club Log の Leaderboards や Slots が原因で,全バンド全モードを交信しようとする Big Gun が増え,標準的な設備を持つ局の交信の機会を減らしているという話しがあります.K1N でもその対策のために Leaderboards 機能を停止しました.しかし,Band New でも Mode Newでもない交信を遠慮せずにやりたい放題やる局は Leaderboards や Slots がなくても同じ事をやります.なぜならば,全部交信したいからです.ですから,Leaderboards 機能は有効にして多くの交信をしている局を白日の下に曝した方が実は多少なりとも抑止力になるのではないかと私は思っています.
また,ペディションを計画する側がドネーション額を統計し『大陸毎のドネーション額の比率』を提示してペディションへの協力度合いの指標にするのであれば,『大陸毎の正味の交信局数』でペディションの評価をしなければ,まやかしになるでしょう.
K1N も『大陸毎の交信数』で見ると,アジア(AS)と北米(NA)以外の大陸は『大陸毎のドネーション額の比率』を超えています.にもかかわらず不満が爆発しているのは『大陸毎の正味の交信局数』が『大陸毎のドネーション額の比率』を大幅に下回っているからではないでしょうか.
私は交信が出来ても出来なくても遊びの仲間を応援したいと思ってドネーションをするのが本来の姿だと思います.しかし,ペディションを実施する側がドネーションで協力度合をはかる以上,同様にペディションの成果も『大陸毎の正味の交信局数』ではかられても仕方がないと思います.
最後に
往年の金持ちの道楽ペディションのように,『自分の金で,自分がやりたいようにやる,だから誰にも文句は言わせない.』というスタイルで実施出来るペディションが皆無に近い昨今,今回の K1N が大型ペディションのあり方について考える機会になることを切に望みます.
JA1ELY 草野さんが音頭をとってくれた K1N Japan Support Fund by JA DX Group を私も応援しました.その理由は,みんなで一緒に遊ぼうという気持ちにつきます.無線は相手がいないと交信が出来ません.ですから,金額の多少にかかわらず気楽に応援しようという忘れがちな当り前のことを一生懸命友人達にも言っていました.交信が出来ても出来なくても応援したいという気持ちがあって,皆さん,ドネーションをしていただいたと思います.それは間違っていなかったと思います.
ただ,今後は,いくら大ペディショナーが実施するペディションであっても,きちんとしたペディションの計画が事前に提示出来ないプロジェクトに関しては応援することはやめたいと思います.私に限らず,DX に興味があって,それなりに歴史も知っている方は,K4UEE Bob と W0GJ Glenn のことを全面的に信頼し,歴史に残るペディションを成功させてくれると信じていたと思います.遊びと実業は違いますが,事業計画もなしに,「うまいことやるから俺を信じて金を出せや.」という人に出資する常識は世の中にはないでしょう.
また,次世代のペディショナーを育てるために,若い世代を送り込むためのファンドを考えなければ行けないとも思いました.オペは未熟でも体力があって設営などの野外活動をバリバリこなせる若い子を行かせて勉強させる.アメリカでは ARRL と BSA が JOTA などで野外活動と無線の両方に長けた若い人材を育成していますから,そういう中から代表が選びやすいでしょう.私はスカウトなので,JA でもローバースカウト(18〜25歳)の活きがいいのを送り込みたいです.
JA は世界最大のアマチュア無線大国です.ですから,その点だけ見れば,世界中で一番貢献を求められる国です.しかし,JA は昔のような経済大国ではなくなりました.アメリカのようにドネーション文化が進んでいませんので,税制上の優遇措置もありません.今回の K1N のスポンサーのリストを見た時,時代が変わったことをあらためて実感しました.JA に元気があった頃であれば 3Y5X の時のように CQ 出版社がドーンとスポンサーになれたでしょう.ですが今は無理です.JA の個人ドナーの筆頭に CQ 誌の櫻田編集長(JP1NWZ)のコールを見た時,CQ 出版では無理でも最大限の協力を DXer でもある編集長がポケットマネーで行ったのであろうことは容易に想像が出来ました.昔は,このカントリー(エンティティ)が CFM 出来たら #1 Honor Roll になれるというペディションになると,JA の大 OM 達は多い方になると 1 万ドルのドネーションをされる方もいました.JA がもうそんなことは出来る国ではないのだということを海外のペディショナーには理解してもらわないといけないでしょうし,JA のアマチュアはもうそんなことが出来る国ではないのだと自覚して,せめて品格を持った運用をするべきだと思います.
おわび
ペディション期間中.数度,SWL レポートをクラスターに SPOT しました.それが原因で DQRM やパイルが起こり,自力で交信するために諦めずにワッチをしていた人達に迷惑をかける結果になってしまったことがありました.思慮に欠ける行動でした.おわびいたします.私の SPOT で交信のチャンスが奪われた方に,次の機会がありますことを願っています.